ブルマーに統一、くすぶる不満 シンガポール日本人中学の体育着 シンガポールの日本人学校中学部(垣崎静男校長)が、女生徒の体育着をめぐって 揺れている。服装が原則自由だった同校で、学校側が今年度から、体育着をブルマー に統一しようと指導を強めたことが発端だ。「太ももが露出して恥ずかしい。ショー トパンツを認めて」と、一部の女生徒が反発、署名活動で食い下がった。学校側は 「一部のわがままは認められない」と押し切ったが、不満はなおくすぶっている。 (シンガポール) 同校では、体育の授業は、ブルマー、ショートパンツ、キュロットなどの混在で行 われてきたが、九一年、新任の保健体育教師が「日本の中学で採用しているブルマー の方が動きやすいので、これに統一したい」と提案。今年四月には、ショートパンツ 組は一クラス二、三人程度にまで減少。さらにブルマー化を徹底しようと、ショート パンツ姿の女生徒を「規則違反」としたことから、反発が起きた。 ブルマーはすそにゴムが入り、体にぴったりつく。ある生徒は「太ももの上部まで 見え、校外マラソンの際、通行人にじっと見られる」と訴え、「全員に強制する理由 はない」と主張。六月の体育祭の予行演習で、二年生のあるクラスの女生徒が申し合 わせ、全員ショートパンツ姿で参加したこともある。 その後、父母が「学校側にはっきり決めてほしい」と要望、七月上旬、学校側は 「女子はブルマー」「男子は黒または紺のショートパンツ」と指定した文書を配った。 女生徒の側は、二年生の女生徒約百二十人のうち百六人の署名を集め、学校側との 話し合いを求めた。パネルディスカッションが開かれたが、結論は変わらず、その後 学校側は、「解決ずみ」としている。 一見ささいな服装をめぐる騒ぎだが、教師側と不満派生徒の主張は、各局面ですれ 違った。 「ブルマーは体にぴったりして機能的」と考える教師側に対し、生徒側は「腰の線 や足が露出しすぎる」と主張。「服装の統一で集団の美を教えたい」に対しては「画 一的服装は美しいか」。さらに「九九%が従ったのに一%が従わないのはわがまま」 との説得に、「少数派でも正しいことはある」。 一方、同国の欧米系国際校では、ショートパンツ型を採用している。住民の多くが、 体の露出する服装に敏感なイスラム教徒であることに配慮した措置だ。 垣崎校長は「何でも地域住民の流儀に従うのが国際化ではない。体育大会では行進 など純日本的なやり方で行い、多くの保護者の支持を得ている。恥ずかしいという点 では水着の方がもっと恥ずかしい」という。 これに対し、母親の一人は「海外では、日本以上に多様な価値観への目配りが必要。 品物の入荷不足から厳しい服装規制には対応しにくい面もある。先生方は、自分が日 本でやってきた方法をただ押し通そうとしているように見える」と指摘する。 九月、十月。ショートパンツ組の生徒たちもブルマーに変わっていった。ある生徒 は「納得したからじゃない。先生にはいくら言っても通じないと分かったからだ」。 《シンガポール日本人学校》 シンガポール日本人会が設置する私立学校。三月現 在、二千四百七十九人が在籍する。施設の維持費の一部は日本政府の補助金でまかな われ、教職員も、日本の公立学校から交代で派遣されている。小学部と中学部に分か れ、「国際性豊かな生徒の育成」を目指している。 93.11.22 朝刊 12頁 教育 |